注)五年生設定です。

 


「きり丸、お前一体何のバイトしてきたんだよ」
「それはな・い・しょ♪」

 茶化した風に言えば、包帯を巻いてくれていたはずの乱太郎に殴られた。いてぇ、怪我人なのにこの仕打ちはないだろ、と文句を言うと奴はじと目でおれを睨んでくる。

「なーにが怪我人だよ。自業自得だろ。危ないバイトなんかして」
「しょうがねぇだろー。安全が保障されているバイトってのは時給が安くなるんだから。少しぐらいの危険は冒さなきゃあ」
「調子に乗ってると今に痛い目に遭うぞ」
「上等」

 にかっと笑って見せれば、乱太郎は呆れたように額を押さえた。

 それはまあそうだろう。丑三つ時にいきなり起こされれば、おれだったら不機嫌の極み。乱太郎だから文句を言われる程度で済んでいるのであって。

「ごめんごめん。今度何か奢ってやるから」
「へぇ、きり丸が奢ってくれるなんて珍し――って、そういう話をしてるんじゃないだろ!」

 おれに対する腹いせなのか、包帯を目一杯強く巻かれた。本当にこいつはおれのこと怪我人として認識しているのか、疑わしくなるくらいのきつさだ。今度は文句も言えずに黙って耐えていると、重いため息が聞こえてきた。

「……まったくきりちゃんは、いつまで経っても本質が変わらないんだから」
「それはお互い様だろ。五年連続保健委員の猪名寺乱太郎君」
「私が不運な理由の大部分は、きり丸が占めてると思う……はい、終わり」

 無駄口を叩き合っているうちに包帯を巻き終わったらしい。バイトなどで多少の怪我をするのは慣れているものの、やはり包帯を巻くまでの怪我というのはあまり負ったことない。何だか腕に多少の違和感がある。

 乱太郎にそう洩らすと眠そうな声で「しばらく我慢しろ」と言われた。ああ、そういえば今は夜だったか。意識してみると急激に眠気が襲ってきた。乱太郎が敷いてくれた布団に潜って、灯りを消そうと息を吹いた。

「あんまり心配、かけるなよ」

 灯りを消した刹那、暗闇からぽつりとそんな声が聞こえたような気がした。

 しかしそれきりだ。後は僅かな音さえも聞こえてこなかった。

 物凄く眠いはずなのに、隣から規則正しい寝息が聞こえてくるまでおれは中々寝付けなかった。

 

 

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きり丸は成長したらかなり危険なアルバイトもこなしてそうです。そんでもってたまに怪我して帰ってきて夜、乱太郎を起こすとか。はい、妄想です。

乱太郎がずっと保健委員なのは基本ですね!