「で、結局味噌水にしたわけですか」
「うん。さすがに黒古毛先生の料理はちょっと遠慮しようかなって。ところで滝夜叉丸」
「はい」
「どうしてそんなに離れてるの」
「そういうことは自分の格好を見てから言ってください」

 と言いつつまた距離を取る。
 それも無理からぬ話、暑さでやられたのかどうかは知らないが(知りたくもないが)、タカ丸は何故か褌姿で、昼飯の材料が入った竹筒を抱えていた。

「学園長ー! わたしの作った料理食べて下さいよー!」

 その上たまに傍を駆け抜けてゆく、これまた褌姿の般蔵と追いかけられている学園長……もしかして流行っているのだろうか褌。

「ってそんなわけがあるか!」
「え? 何が」
「いいからタカ丸さんはさっさと服を着てください。昼食はそれからです」
「でもこれ涼しくて……」
「ならせめて下をはいてください!」

 その姿で前をうろうろされては適わない。味噌水を飲んでいたら吹き出すところだった。
 タカ丸は頷きどこぞへと駆け出した。が、しかしすぐにまた戻ってくる。困ったように笑いながら、

「服どこにやったんだっけ?」
「知りませんよ!」
「あっちの茂みのような気もするし、こっちの茂みのような気もするし」
「覚えてないんですか」
「ちっとも」

 頭を掻きながら笑う。悠長に笑っている場合ではない。彼は気づいているのだろうか、先ほどからしきりに向けられている忍タマたちの訝しげな視線を。
 このままではろくでもない噂を立てられかねない。滝夜叉丸はため息を吐き、それから素早く上着を脱いで、タカ丸に手渡した。

「一緒に探してあげますから、とりあえず私の服を着といてください」
「でも滝夜叉丸」
「安心していいですよ、失せ物探しは得意なんです。まあこの私が苦手とするものなど滅多にありはしませんが」
「滝夜叉丸ってば」
「ましてや制服なんて目立つもの、私の手にかかれば……って何ですか。まさか暑いから嫌だなんて言いだしませんよね」
「そうじゃなくってさー」
「そうじゃなくって?」
「この服ちょっと小さいんだよ」

 見れば確かに少々きつそうではある。それでもタカ丸は無理やり袖に腕を通そうとしていたが、糸のほつれるような不吉な音がして、慌てて待ったをかけた。

「肩に引っ掛けるだけでいいですから!」
「あ、いいの?」
「ええ」

 どっと疲れて肩を落とす。彼と会話を交わすと無駄に気力を使ってしまっていけない。
 まったくどうしてこうもまめまめしく世話を焼いてやらねばならないのだと、誰でもいいから恨みたい気分だ。

「ではタカ丸さんは向こうを探して下さい。私はあちらを探しますから」
「うん。その前に滝夜叉丸」
「な、何ですか」

 いきなり真面目な顔になり迫ってくるので、思わず数歩後ずさってしまった。普段はとぼけたような顔をしているからだろうか、真顔になった彼はどこか迫力がある。
 真剣みを帯びた表情のまま、タカ丸は口を開いた。

「腹減ったし昼食食べてから探そーよ」
「あなた私の話聞いてましたか!?」

 
 
 







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話の元になった「暑くてたまらんの段」再放送記念(?)
ブログに載せてたのをちょっとだけ修正。
…にしてもツッコミどころ満載すぎる…。