指が赤い。燃えているみたいに。
 顔を上げると意志の強い瞳がこちらを射抜いていた。

「どうしてこんな」

 努めて冷静であろうとして、装いきれていない。微かに震えた声を悟られぬように、彼は眉間に皺を寄せる。
 何も言えない。
 屍は口を聞かず、喧騒とは程遠い静かな山の中で、互いの熱い息遣いだけが鮮明に聞こえる。
 血の乗った刀ばかりが冷たい光を放っているようだ。
 左近がもう一度口を開け、苛ついた声で訊ねた。
 その声に混じった感情を疎ましく、また少し悲しくも思う。
 これまでの自分達には二度と戻れないような気がした。

「……お前の所為だ」

 歪む。そんな顔させたくはないのに。
 でももう手遅れだ。刀が滑り落ちる音は冷たく、何もかもを終わらせるようで。

「ぼくはお前を助ける為に」

 お前ならもっと上手くやれたのか?
 言い訳は彼を縛る。
 けれど尚、赤く痺れた指を肩にかけて責めるように呟いた。
 お前の為なのに、お前の所為なのに、ぼくを責めるのか。
 囁く度に歪む、歪む、歪む、彼の顔。震えた肩は泣いているようで、眼差しは揺らぎ、俯く。
 どうにもならなかったことくらい、彼も己も分かっていた。取り返しのつかないことを押しつけあう愚かさにも。
 膝が崩れる。
 いつしか食い込んだ指が彼の肩を赤く汚したので、もう本当に戻れないのだと知って悲しくなった。