するりと腹の辺りに手を回され引き寄せられて、文句を言う前に髪に顔を埋められた。ふわふわの髪の毛はそれでなくとも絡まりやすいというのに、そこのところ彼は分かっているのだろうか。聡明で中々に頭のいい彼のことだから分かっているのかもしれないが、それはそれで性質が悪いと言えなくもない。

「きり丸、暑苦しい。髪が絡まる」
「分かってるー」

 本当に性質が悪い。

 五年にもなれば、薄くて短かった猫毛も何とか結える程度に長くなっている。きり丸ときたらその結っている毛の中に埋もれているのだ。手入れが難しい髪を触られるのはあまりいい気がしないし、こんなところを人に見られるのも何だかなぁと思う。

 まあわざわざわたしたちの部屋に入ってくる人なんて同室者のしんべヱくらいしかいないだろうけど。それにしても。

 わたしは強引にきり丸を引き剥がして、ありったけ睨みつけた。

「何なんだよ、人の髪で」
「なんかこう、癒し? を求めてるっていうか……」
「癒しぃ?」

 自分の髪がどうなったら癒し要素になるのかがまったく理解できなくて、わたしは睨むのを忘れて首を傾げた。仮にきり丸の言うとおりだとしても、人の髪で勝手に癒されるなんてどういう了見なんだこいつは。

 わたしの疑問に答えるかのように、きり丸はにんまり笑って口を開いた。

「もさもさしている髪っていいと思わない?」
「じゃあ土井先生の髪は。もさもさ」
「あれはごわごわっていうの。……乱太郎の髪は何ていうか、こう、柔らかい感じ」
「何だよそれ」

 嘆息すると、きり丸は勝手に髪を掴んだ。

 けれどもそれは引っ張るような、強い感触ではなくて。何と言うか恐る恐る触るような、そんな危うさを感じさせた。

 きり丸らしくなくて、わたしは彼の顔を眺めたけれど、いつも通りの笑顔を返されてしまった。にんまり、と人を喰っているような。

「いいよなー乱太郎の髪」
「そう? わたしはきり丸の髪の方が綺麗だと思うけど」
「まあね、毎日手入れしてるし。当たり前」
「何だよ、結局自分の髪の方がいいんじゃないか」
「それとこれとは話が別ー」

 しばらく会話をしながら手の中でわたしの髪の毛をいじっていたきり丸だけれど、再び引き寄せてもさりと髪に顔を埋めた。

 文句を言うのも馬鹿馬鹿しくなって、わたしは成すがままきり丸に髪の毛を貸す。これ、他人に見られたらどう言い訳しようかと考えながら。

 
 秋の初め、夏の終わり。そんな日の出来事。

 

 


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きり乱で甘いのを書いてみよう! と思って書いたもの。やっぱりどこかぬるいですね、私の書くのは…
またもや五年設定。親友以上恋人未満って奴ですなー。親しいんだか何なんだか