「おやすみ」
 
 ただ一言、失うのを恐れている。

 臆病になったのはいつ頃だったのだろう。はっきりは覚えていないけれど、確か遥か遠くの日からだ。
 
 強いだなんて思い違いで。
 
 脆い心は見ない振りして。

 ぽたらぽたらと滴り落ちる、血の底は暗く澱みなく。
 
 体中どこだって血塗れで。

 もう、

 お前の姿さえ紅の中に。

 
 だからせめて、全てを失う前に、消えてしまう前に。お前の声を聞きたいと思った。優しい声、優しい言葉を。

 
 それなのに紅い視界の中で、お前は一度たりとも望みの言葉を言ってくれない。最期にもう一度だけ聴いておきたいのに。

 

 おやすみ、と。

 

 その言葉だけで救われるのに。

 






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…きり乱? には見えませんね…。
ちなみに死にません。今のところ死にネタを書くつもりはありませんので! ええ、今のところは。