※アニメ「合戦場の弁当」ネタです。ネタばれ注意。

 



「どこで食っても食堂のおばちゃんが作った飯は旨いな!」

 矢が飛びかい、血で血を争う合戦場。

 小平太を含め実習に来ていた六年生の何人かは、戦いが一段落ついた間を見計らって昼食にしていた。血と鉄と土の匂いが漂う合戦場での、一時の憩いの時間だ。

「伊作、もうちょっと静かに食えねえのか」
「ん? だってこれめちゃくちゃ美味いから」

 早めに食べ終わっていた文次郎が、忙しなく弁当を食らう伊作に文句を言う。しかし伊作は文句など何のその。手を休めることなく、ひたすら飯をかっ食らっう。

 文次郎も無駄だと思ったのか、呆れた表情をしながらもそれ以上は何も言わずに茶をすすった。

 長次は皆に背を向けながら黙々と弁当を消費している。仙蔵も木に背をもたれながら、比較的静かに弁当を食べ続けていた。

 他の六年生たちも皆一様に食堂のおばちゃん特製の弁当を食べる。

 そんな光景を眺めながら小平太も箸を進めていた。

 白いご飯が土煙に塗れたこの場所では新鮮に見える。よく噛んだ後ごくりと飲み込み、また食らう。

 緊張と長丁場で少しばかり疲れた体が癒されていくのを感じながら、小平太はふと先ほどのことを思い出していた。

 あの時――二人の一年生が合戦の激しい最中に迷い出てしまったのを見つけたときは肝を冷やした。

 一歩間違えれば命を落としかねない状況、小平太は必死になって辺りを見回し、安全な逃げ道を探した。そして結果上手く誘導することに成功したのだ。小さな背中が合戦場から遠ざかっていくのを見て、心の底からほっとした。

 それにしても生きるか死ぬか、か。

 昔同じようなことを先輩から言われたっけと思い出し、何ともいえない苦さが沸いてくる。

 そうだ、ずっとずっと昔。あの二人と同じぐらいの年齢だっただろうか。

 
 おつかいの帰りに、運悪く戦に巻き込まれてしまった小平太は、当時たまたま実習に来ていた六年生に助けられた。

 よく知らない先輩だったが、小平太は今でもあの時吐かれた言葉を一字一句思い出せる。

 ――馬鹿やろうが! 忍者はいつでも生きるか死ぬかなんだよ!

 真剣な顔で吐かれた言葉は、今でも小平太の記憶にしっかりと刻み込まれている。

 戦に巻き込まれていた自分を見つけたとき、先輩もこんな腹が冷えるような気分を味わったのかと思い、何だか懐かしさを覚えた。

(先輩、今ならその気持ち分かるよ)

 先輩と言葉を交わしたのはその日たった一度きりだ。卒業してから先輩が何をしているのかも知らないし、特に知ろうとも思わない。

 ただ――実習で戦場に来るたびに頭を過ぎる。先輩の言葉、真剣な表情が。

「小平太」
「うおっ、仙蔵」

 気がつけば仙蔵の顔が目の前にあって、小平太は驚いた。仙蔵は呆れたように「お前が一番遅いぞ」と言って周りに視線をやった。

 成程、小平太が思いをめぐらせている間に、皆弁当を食べ終わったようだ。箱を片付け立ち上がり、他の同級生は準備をしていた。

「さっさと食え。これからもっと厳しくなる」
「ああ」

 少しばかり残っていた弁当を、一気に口に押し込んで立ち上がった。味わうどころではない。弁当の箱を重ねて茂みの隅へと隠し、少し伸びをしてから準備し始める。

 小休止していた戦も徐々に激しさを取り戻してきていた。

「じゃあ行くぞ、小平太」
「おう……あ、仙蔵」

 名を呼ぶと、仙蔵は疑問の表情を浮かべた。小平太はこの場にまったくそぐわぬ笑顔で口を開いた。

「どこで食べても旨いけどさ、やっぱり飯はもうちょっと安全なところで食いたいよな!」
「……当たり前だろうが」

 そんなことかとでも言いたげな顔で、ほらさっさと行くぞと背を向けた仙蔵に、小平太はそのままの笑みで深く頷いた。

 

 


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合戦場の弁当の段見れたよ記念小説。あの裏で小平太はこんなこと思ってたかも…という妄想でできてます。
この段の小平太は本当にかっこよくて、改めて惚れなおしてしまいました。