団子を奢ってやったら、二人の後輩は満面の笑みを浮かべて呟いたらしい。 「先輩ってとっても色っぽいですね」 「……ということなのだがどう思う、二人とも」 理解不能、という顔で二人の後輩のことを語る仙蔵を見つめながら、ぼくは首を捻った。 「どういうことだろうね」 長次は無言で何かを考え込むかのように視線を下に向けている。ぼくも長次に倣って視線を外し、顎に手を当てた。 「子どもは意外と色々なことを知っているからねえ。でもその後輩ってしんべヱと喜三太なんだろう。他の子ならともかく、あの二人はそんな言葉知らないと思うんだけど」 ううむ、と仙蔵が小さく唸った。子どもの言う事だといえばそれまでだが、仙蔵の性格上、一度疑問に思い始めたらとことん気になるんだろう。ぼくだって突然問われたときは驚いた。 しかしまあ、色っぽい、ねえ。 「そんなに気になるんなら当人たちに訊いてみたらいいんじゃ」 ぼくが苦笑すると、仙蔵も釣られて眉根を下げた。当人達はちゃんと説明しているつもりなのだろうが、これでは全然分からない。疑問が増すだけだ。 と、今まで沈黙を貫き通していた長次が微かな声で呟いた。 「……優しいという意味ではないのか」 思わぬ言葉にしばし考えてから、ぼくと仙蔵二人同時に納得した声を上げた。 「もしかして忍者の三禁の」 忍者の三禁に含まれる『色』。これは優しさ、という意味もある。あの後輩二人組みはそれで『色っぽい』という言葉を誤解したのだ。ほぼ間違いない。 「そうか、案外単純なことだったのだな」 つまり二人は団子を奢ってくれた仙蔵に「優しい」と言いたかったのか。すっかり疑念が晴れた仙蔵は、一種爽やかささえ感じる笑顔で一息ついた。 ぼくも唇を緩め、「微笑ましい子たちだなあ」と呟いて笑った。長次だけは無表情だが、瞳が少しだけいつもと違う色を浮かべているのをぼくも、おそらく仙蔵も見逃さなかった。 さて、一気に和やかになったわけだが、その雰囲気が崩れるのにさほど時間はかからなかった。 文次郎が血相を変えてぼくたち三人のもとへ飛び込んできたのである。 「お、おい。さっき一年坊主が落とした菓子袋を拾ってやったら、何故か満面の笑みで色っぽいだの何だのと言われたんだが!」 ひくひくと頬を引きつらせながら疑問の念を浮かべる文次郎と『色っぽい』という言葉があまりにかけ離れていて、次の瞬間ぼくたちは大爆笑したのだった。
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