| 縁側に座っていた少女達は、ふと届いた香りにお喋りを止めた。めいめい興味津々といった面持ちで、お使いから帰ってきた少女が手に抱いている包みへと視線を送る。 それは少女が持つにしては少々大きすぎる包みだったが、そうこは難なくそれを皆の前へと降ろして、自らも縁側に腰を下ろした。 「皆へのお土産、これで良かったかしら」 「良いけどそうこ、これちょっと多すぎじゃない?」 「そう? むしろ足りないくらいだと思ったんだけど」 言いながらそうこは包みを解いた。途端、菓子の優しげな香りが流れ、そうこを除いた五人の少女は揃い揃って顔を見合わせた。 誰かの喉が鳴った。けれど一人も目の前の菓子に手をつけようとしない。そうこだけがきょとんとして、首を傾げた。 「皆どうしたのよ。食べないの」 「そりゃあねえ」 「食べたいのはやまやまよ、だけれど……」 みかとしおりが曖昧に笑う。ユキがぽつりと言った。 「その一口がブタの元」 乙女の最大の敵、それは菓子という名の甘い誘惑である。少女達はそれをようく知っていたし、その敵に勝つのは容易ではないことも分かっていた。けれども勝たなければいけない。体重の増加、余分な肉、それを決して許してはいけない。許されてしかるべきことではない。 少女達は黙った。 今目の前の敵に手を出せば止まらなくなるのは必至だったし、かといって片付けようとすればしっぺ返しを喰らうような気がした。具体的に言えば、片付ける為に伸ばしたはずの手が命に背きそのまま菓子の海に潜ってしまうのではないかと思ったのである。 「そうねえ、でも」 沈黙を破ったのはそうこだった。彼女は菓子を見つめ、決意するかのように口を開いた。 「我慢は体に良くないわ」 彼女は皆の見守る中、案外躊躇いなく菓子を手に取り、そのままひょいっと口の中に入れてしまった。あ、と誰かが言って、結局それで皆の理性は崩壊した。 「ま、まあ二つくらいならね」 トモミが言って、ユキが頷く。 「そうよね、二つくらいなら問題ないわよね」 そうそう、と他の面々も頷いた。二つと言いつつトモミはもう三つ目に手を伸ばしていたし、そうこときたら早五つ目を口に放り込んでいた。これで最後と言い聞かせながらユキは二つ目をついばみ、二つも三つも似たようなものよね、とみかが思案する。あやかとしおりがお茶を淹れてくると言って席を立った。 菓子はまだ溢れんばかりにあった。始まったばかりの茶会が終わる気配はまったく見られず、少女達の午後は甘い香りとともに過ぎてゆくのである。 |